ものづくり補助金の収益納付とは?【2025年版】

ものづくり補助金の収益納付とは?【2025年版】

 新商品開発・新サービス開発を行うための設備投資を補助する「ものづくり補助金」。創設から10年を超えている人気の補助金であり、製造業に限らずソフトウェア業や建設業、農業や林業をはじめとした多様な業種の事業者に利用されています。

 ものづくり補助金は国の「補正予算」として措置されるため、その制度内容は毎年少しずつ姿を変えています。補助金は制度ごとに様々な決まりがありますが、重要な決め事の1つに「収益納付」という制度があります。
 
そこで、今回はものづくり補助金の「収益納付」について、従来のものづくり補助金と2025年のものづくり補助金の違いも含めてご説明します。

収益納付とは?

 ものづくり補助金や事業再構築補助金には、収益納付という仕組みがあり、公募用要領には次のような内容が記載されてきました。

 ここでは、聞きなれない「事業化状況の報告」という言葉があります。まずはここから解説していきます。

事業化状況報告

 ものづくり補助金や事業再構築補助金では、補助金に採択されて設備投資などを実施し、補助金が入った後の5年間、補助金で実施した事業がどうなったか?ということを、システム上から報告する義務があります。これを事業化状況報告といいます。
 

 具体的には、自社の報告時点での損益や財務状況、従業員数などの入力や、補助事業ではじめた事業でどれだけの「売上」を獲得し、どれだけの「費用」が生じているかを入力します。
 この「売上」から「費用」が自動的に差し引かれ、「補助事業の利益」が自動で計算されます。この結果次第では、「収益納付」が発生する場合があります。

 収益納付が発生すると、交付を受けた補助金の一部または全部を国庫に返還する義務を負います。せっかく多くの手続きをクリアし、交付を受けたにも関わらずこれを返還するというのはダメージが大きいものです。

 それでは、どのような結果の場合に、収益納付が必要になるのでしょうか?

補助事業の自己負担額<補助事業の累積利益

 事業化状況報告は5年間に渡って計5回の報告が必要です。ここで報告された利益の累積が、補助事業に要した自己負担額を超えると収益納付が発生します。

 この計算は、過去の報告内容も踏まえて報告システム上で自動計算されます。ちなみに、補助事業の成果で利益が出ず、補助事業が「赤字」となった年が生じた場合でも、積みあがった利益からマイナスはできませんので注意が必要です。
 それでは、具体的な数字を用いて計算してみましょう。

収益納付が発生する例

 ここでは、次のような前提のもとで試算していきます。

 ①補助事業に要した経費  15,000,000円
 ②補助金交付金額     10,000,000円
 ③補助事業の自己負担金額  5,000,000円
  ※③=①-②で算出
 ④補助率         2/3
 ⑤補助事業の成果による利益
  1年目~5年目=毎年1,200,000円
   ※売上6,200,000円、費用5,000,000円

 このケースの場合、補助事業の自己負担金額である「5,000,000円」を超える利益が、5年間の事業化状況報告で積み上がると、収益納付が発生します。
 一方、毎年の利益を見てみると毎年1,200,000円であるため、5年間では6,000,000円の利益が積み上がります。その結果、自己負担金額の5,000,000円を1,000,000円ほど上回ってしまいました。この1,000,000円が収益納付の対象になります。

 しかし、この1,000,000円を丸々返還する必要があるのか?というと、そうではありません。あくまでも国が支援した資金の割合は、補助率と同じ2/3です。
 そのため、この1,000,000円のうちの国の投資割合は2/3となり、666,666円が国庫に返還する金額となります。

 収益納付とはこのような制度ですが、2025年から始まるものづくり補助金では様子が変わります。

収益納付の廃止(2025年)

 ここまでの解説のとおり、補助事業が順調であればあるほど、せっかく交付を受けた補助金を返還する必要が生じます。国の投資によって得た利益という理屈は分かりますが、これでは補助事業者は「頑張り損」とも言える状況です。
 そこで、2025年(令和7年)からこの制度にメスが入ることになりました。2025年から始まる令和6年度補正からは、収益納付が廃止されます。この情報は、令和6年度補正ものづくり補助金の実施内容の事前公表資料に、次のように記載されています。

 補助事業者にとっては朗報ですね。しかし、これまで10年間続いてきた制度が、ここにきてなぜ廃止になるのでしょうか?

収益納付が廃止される理由

 これは憶測ですが、収益納付という制度により、正確な事業化状況報告が阻害されている現状があったものと思われます。
 「補助事業で利益を獲得できたという報告をすると、補助金を返還しないといけない」となると、実際には利益が出ていても、「利益が出ていないような報告をする」方向へ力が働くのが人情でしょう。実際に、私の周りの事業者様で「収益納付をしたよ」という方はほとんど存在していません。

 この状況は、国にとってもマイナスです。収益納付が発生すると国庫に補助金が戻ってきますが、これは極わずかな金額。その金額を得るために、事業者から「利益が出ていない」という報告が大量に発生すると、「この政策は効果がないのでは?」と国民からも国自体からも疑問視されてしまいます。

 それよりは、わずかな補助金返還を得るよりも、「補助金のおかげで利益が出て成長できています」という報告を得られやすくなる方が、国と事業者にとってWin-Winと言えるでしょう。
 ここでもう一つ気になるのが、過去にものづくり補助金や事業再構築補助金を実施した事業者の扱いです。

過去の採択事業者は従来どおり納付が必要

 これは推測ですが、2024年(令和6年)までのものづくり補助金、事業再構築補助金などに採択された事業者の収益納付は、残念ながら遡って廃止されることはないでしょう。

 その理由は、すでに収益納付が発生しているケースが考えられるからです。国庫に返還となった補助金を、さらに事業者に返還するということは考えにくいため、既に走り出している制度は5年間の事業化状況報告を完走するまでは、そのまま走り続けるものと思われます。

 とはいえ、2025年からの採択事業者は収益納付という心配事が消えることで、より事業の成功に注力できるようになります。補助金を上手に活用し、事業の発展を加速させていきましょう!!

まとめ

 いかがでしたか?ものづくり補助金は魅力的な制度ですが、収益納付という制度が1つのネックになっていました。これが廃止されたことで、ものづくり補助金はより使いやすい制度になります。補助金を熟知したコンサルタントと早めに連携することで、採択を勝ち取っていきましょう!

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