革新的新製品・サービス枠とは?【新事業進出・ものづくり商業サービス補助金】

 2026年6月に新設された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」。中小企業庁が実施する補助金であり、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合されて誕生した制度です。

 この補助金には3つの枠があり、自社の取り組みにフィットする枠を選んで応募申請する形となります。具体的には、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つから構成されており、それぞれの枠について詳細まで把握したうえで、選択することが肝要です。

 それぞれに多くの特長と注意点がありますが、この記事では従来の「ものづくり補助金」に相当する「革新的新製品・サービス枠」について説明していきます。

革新的新製品・サービス枠の概要

 まずは、革新的新製品・サービス枠の概要について解説していきます。主なポイントは「補助金額」「補助率」「取組要件」「賃上げ要件」です。

①補助金額

 補助金額は企業の規模が大きくなるにつれて、上限が拡大していく構造になっています。たとえば従業員数が1~5人以内の場合は750万円が上限ですが、従業員数が6人以上になると1,000万円21人以上になると1,500万円51人以上になると2,500万円まで拡大されます。
 補助下限額は100万円に設定されています。あまりにも少額の投資内容だと応募することができません。補助対象経費が150万円で補助率が2/3の場合や、補助対象経費が200万円で補助率が1/2の場合は下限ギリギリとなります。私の支援経験ですと、補助対象経費は800万円~3,000万円の事業者がほとんどですので、ここの要件に抵触するケースは少ないのではと思います。
 なお、「賃上げ特例適用時」の金額は 賃上げ特例の適用による補助上限額の引上げを受ける事業者のケースの数値です。通常の賃上げ要件よりもさらに大きな賃上げを行うことで、より多くの補助金額を申請できるようになります。

②補助率

 小規模企業・小規模事業者、再生事業者は補助率2/3それ以外の事業者は補助率1/2となっています。小規模企業・小規模事業者とは基本的に商業・サービス業であれば従業員数5人以内、それ以外の業種ですと従業員数20人以内の事業者を指します。
 ちなみに、従業員数にカウントするのは「正社員だけ」と思われがちですが、実際には次のように定められており、試用期間でなく雇用期間の定めがないパート・アルバイトも含みます。ただし、派遣社員は自社雇用ではないので従業員数にはカウントしません。

常勤従業員は、「中小企業基本法(昭和 38 年法律第 154 号)」上の「常時使用する従業員」をいい、「労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)」第 20 条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」となります。これには、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません。

 また、応募時は小規模企業・小規模事業者に該当している場合でも、「補助事業完了日」までに従業員が増加して、小規模企業・小規模事業者に該当しなくなった場合には、補助率は当初の2/3から1/2へ縮小されるため注意が必要です。

③取組要件

 革新的新製品・サービス枠に該当するためには、補助事業で設備投資を行って実施する取り組みが、革新的な新製品・新サービス開発」である必要があります。そのため、これらの開発を伴わず、「既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業」は補助対象外となりますので注意してください。それでも、「採択される可能性は少しはあるでしょうか?」という質問を受けることがありますが、答えはNO。審査で確実に不採択になります。
 それでは、「
革新的な新製品・新サービス開発」とはどのようなことを指すのでしょうか?その答えは、「顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発すること」と定義されています。
 また、「
業種ごとに同業の中小企業者等(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発」も対象外になるため注意が必要です。つまり、競合他社の多くが行っている製品の製造やサービスの提供では、審査で「革新性なし」と判断されて不採択となります。
 たとえば、金属加工事業者が補助事業で工作機械を導入し、高精度の切削加工を行う場合でも、それが地域内の金属加工事業者が当たり前に行っている精度のものであれば、革新性は認められません。飲食業でしたら、スチームコンベクションオーブンを導入してパンケーキを焼く事業であっても、このパンケーキに素材や製法等で競合他社にない価値を付加するものでなければ、革新性は認められません。

④賃上げ・事業場内最賃水準要件

 近年の中小企業庁で規模が大きな補助金のほとんどに課されているのが、「賃上げ要件」「事業場内最賃水準要件」です。
 「賃上げ要件」は、「
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加する見込みの事業計画を策定し、これを達成すること」が要件になります。3~5年の事業計画は、応募者自身が3年・4年・5年のいずれかを選択できますが、賃上げ期間は長ければ長いほど大変ですので、「3年」にするのが得策です。
 「年平均成長率」ですので、3年計画の場合には基準年度の一人当たり給与支給総額×1.035×1.035×1.035の金額を3年目に達成することが必要になります。具体的な数字を用いると、基準年度が3,500,000円だった場合には、3,880,513円が必要ということですね。ちなみに、1年後・2年後時点では未達でも構いません。

 「事業場内最賃水準要件」は、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より「30円以上高い水準」であることが必要です。
 たとえば、3年計画で補助事業実施場所が広島県の場合、1年後・2年後・3年後の各時点で当該事業所の従業員全員が広島県の地域別最低賃金よりも30円以上高い給与水準(時給換算額)であることが必要です。
 「賃上げ要件」では3年後で達成すればOKでしたが、 「事業場内最賃水準要件」では毎年達成する必要がある点、近年の傾向を見ると各都道府県の地域別最低賃金は毎年上がっている点に注意しましょう。

 ここまで、各種要件について説明してきましたが、具体的にはどのような取り組みが補助対象になるのでしょうか?これからいくつか説明していきますね。

補助対象となる取り組みの例

 従来の「ものづくり補助金」では製造業の採択が最も多かったです。この度の「革新的新製品・サービス枠」も同様の傾向が想定されますが、幅広い業種で活用が可能な制度ですので、製造業以外も含めて取り組み事例を紹介していきます。

業種 表題 詳細内容
金属加工業 難削材対応の超精密複合部品開発 5軸マシニングセンタと測定機を導入し、従来は複数工程で製造していた難削材部品を一体加工する。航空・医療機器向けに複雑形状と高精度を両立した新たな複合部品を開発し、顧客の軽量化・小型化需要に応える。
プラスチック製品製造業 異素材一体成形による高機能部品開発 多色・異材質成形対応の射出成形機と金型を導入し、樹脂と軟質材を一体成形した防水・防振部品を開発する。従来の組立では困難だった薄型化と耐久性を両立し、医療・電子機器向けの新たな高機能部品を提供する。
食品製造業 個別栄養設計に対応する冷凍食品開発 急速冷凍機と自動計量・混合設備を導入し、年齢や健康志向に応じて栄養成分を調整できる冷凍惣菜を開発する。食感と風味を維持しながら高たんぱく・減塩等を実現し、従来の一律商品にはない選択価値を提供する。
パン・菓子製造業 地域素材を活かす高付加価値菓子開発 スチームコンベクションオーブンと温湿度制御設備を導入し、地域産果実や穀物の特性に応じて焼成条件を最適化する。保存料に頼らず食感と香りを維持する独自製法で、常温流通可能な高付加価値焼菓子を開発する。
ソフトウェア業 生成AI連携型の現場判断支援サービス 生成AI基盤と画像解析システムを構築し、現場の映像・作業記録・設備データを統合して異常兆候と対応策を示す新サービスを開発する。熟練者の判断を学習し、現場ごとに改善提案まで行う独自の支援機能を提供する。
建設業 三次元計測を活用した改修診断サービス 3Dレーザースキャナと解析ソフトを導入し、既存建物の点群データから劣化箇所や施工誤差を可視化する診断サービスを開発する。目視・手計測では困難だった面的な診断と改修案の提示を実現し、提案価値を高める。
飲食業 自動調理設備を活かす個別対応料理開発 自動調理機と温度制御システムを導入し、顧客のアレルギー、嗜好、栄養条件に応じて調理条件を変える個別対応料理を開発する。熟練技術を数値化し、安全性と品質を両立したオーダーメイド型サービスを提供する。

 このように、審査員が計画内容を見た時に「これは十分な革新性がある」と判断できるような取り組みで応募することが大切です。ここで胸を張って「革新性が高い」と主張できない場合には、採択されるか否かは完全に運任せとなってしまいます。

まとめ

 いかがでしたか?新設された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の「革新的新製品・サービス枠」には革新性が不可欠ですが、自社の競争力を高めることを鑑みると、新たな取り組みの場合には自然と革新性は高くなるものです。
 賃上げなどの要件もしっかりと押さえることが前提ですが、資金調達の目途も立ち、勝ち筋の見える事業であれば、積極的に
チャレンジすることをオススメします。設備投資の補助を受けられれば、新たな取り組みへのハードルがグッと下がります。

 広島県福山市で本社を置く弊社では、各種補助金の申請サポート(行政書士との連携による申請代行含む)を展開し、オンラインでも全国対応しております。 
 この度ご紹介した各制度に精通し、経験・実績ともに豊富な中小企業診断士が事業者様の応募準備から補助金の交付までを強力にサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください!

(広島県・岡山県だけでなく全国対応! ※北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

お問合せ

contact

24時間 365日 受付対応