中小企業が既存事業とは異なる新分野へ挑戦するための「新事業進出補助金」。制度の趣旨は、新たな製品・サービスを新しい顧客層に届け、企業の第2・第3の柱を育てることにあります。
一方で、申請の現場では「社内リソースを使って自力で申請するべきか?コンサルにサポートを依頼すべきか?」という悩みが必ず生じます。
結論からいえば、制度上は自力申請が可能です。ただし、申請者自身が事業計画の作成に責任を持つことが求められており、いわゆる丸投げは認められません。支援者の助言や資料整備の支援は活用しつつ、最終的な意思決定は常に自社が担う前提で考える必要があります。
今回は、自力申請とコンサル活用の「3つのメリット・3つのデメリット」を比較し、実務で役立つ判断ポイント、ハイブリッドな進め方、スケジュール感まで具体的にご紹介していきます。
Contents
自力申請の3つのメリット
まずは自力で申請する場合の、メリットをご説明します。
①コストを最小化できる
最大のメリットは、なんといっても外部に支払うコストの削減です。成功報酬型のコンサル費が10%だとすると、補助金額が2,000万円なら報酬は200万円に達します。自力申請であればこの支出をゼロにできます。
採択後の交付申請・実績報告も自社で回せる体制が整っている企業は、キャッシュアウトを大きく抑制できます。
②事業理解が深まり意思決定の質が上がる
補助金の要件・審査項目を読み込み、自社の強みや市場の有望性、収益性の根拠を言語化する過程は、そのまま事業の骨太な戦略づくりになります。
さらに、製品等の新規性、顧客層の新規性、新事業の売上計画などを自分の言葉で説明できるようになることで、社内の合意形成が速くなり、金融機関への説明力も高まります。
③スピードと自由度を保てる
外部との日程調整や契約プロセスを省けるため、着手までが速いのも利点です。図表の作り方、言い回し、試算方法なども自社流で統一でき、修正の指示待ちが発生しません。
短期間でやり切る集中力があるチームにとっては大きな武器になります。
続いて、デメリットも見ていきましょう。
自力申請の3つのデメリット
①専門性の壁と最新ルールの追随コスト
新設の補助金は用語の定義や判定ロジックが独特です。例えば「ジャンル・分野の区分は性能・サイズ・価格帯・顧客層といった属性では切らない」「既存顧客と同一のチャネルは新市場にならない」といったルールから逸脱すると、計画全体の組み立てが崩れるだけでなく、補助対象にならない計画になってしまいます。
さらに、審査項目は多面的で、実現可能性・費用対効果・政策適合・地域波及・デジタル活用などの記載を漏れなく論理的につなぐ必要があります。制度改定やQ&A更新も頻繁に行われるため、これを追随することは、自力では重荷になりがちです。
②時間負担と機会損失
企業に専門の部署がない場合、補助金に申請するための「書類作成の下準備(市場規模や競合の調査、見積収集、体制図の整備)⇒数値設計(投資計画・資金繰り・付加価値額・賃上げ計画)⇒本文作成⇒根拠資料の付け合わせ⇒社内レビューと修正」などを、通常業務と並行して行うことになります。
経営者・幹部の稼働は軽く100時間を超えます。売上に直結する商談や新規顧客開拓とトレードオフになれば、見えないコストはさらに膨らむため、補助金申請プロジェクトのメンバーの時給換算額×稼働時間を全て算定すると相当に大きな金額になるでしょう。
③形式不備・論理飛躍のリスク
新設の申請システムでは、入力欄ごとに設問意図があり、そこで求められる粒度・順序・エビデンスが暗黙に決まっています。
補助金のノウハウを持たない企業の自力申請だと、「審査項目と無関係の魅力を書き込み過ぎる」「加点に触れていない」「図表の定義が本文とズレる」「スケジュールに納期の制約が反映されていない」など、審査で点がつきにくい計画書になりがちです。不採択となった場合、投入した時間は回収できません。
次に、コンサル活用の場合のメリットをご紹介します。
コンサル活用の3つのメリット
①採択までの道筋が見える
補助金コンサルには、多数の応募・採択データに基づく「採択される構成・不採択となる構成」が蓄積されています。そのため、審査項目に対する記載の順序、図表の使い方、説得力のある根拠の置き方、実現可能性とリスク対応の書き分けなど、勝ち筋に沿って短期間でブラッシュアップできます。
制度特有の致命的な落とし穴(例えば、売上10%要件の解釈、賃上げ水準と返還リスクの関係、広告費の設計とKPIの整合性)も事前に回避できます。
②経営チームの時間を取り戻せる
ヒアリングから叩き台の作成、数値モデルの設計、添付ファイルの雛形化、入稿オペレーションまで、重い作業を肩代わりします。
経営陣は意思決定とレビューに集中でき、現場は準備と並走して、商談や生産の平常運転を維持することも可能です。締切直前の差し替え・修正対応も、経験がある支援者の段取りがあれば混乱を最小化できます。
③採択後も見据えた伴走ができる
採択はゴールではなくスタートです。「交付申請・契約・支払・検収・実績報告・事業化報告までの帳票運用」「要件変更時の事前相談」「検査対応」「補助金返還リスクの予防」まで、先を見据えた進め方が重要になります。
「採択まで」しか支援しない体制だと、目標の賃上げ・付加価値が未達になった際に企業側の負担が一気に大きくなりますが、補助金の交付まで支援するコンサルであれば、設計段階から過度な背伸びを避け、達成可能かつ採択されるKPIを一緒に組み立てられます。
逆に、コンサルを活用するデメリットも存在します。これらを見ていきましょう。
コンサル活用の3つのデメリット
①費用負担が発生する
着手金10~20万円+成功報酬、あるいは成功報酬のみで10%~15%前後が相場感であり、キャッシュフローに与える影響は無視できません。経営陣の時間単価や逸失利益と比較してトータルで得かどうか?を冷静に試算すべきでしょう。
②品質のばらつきと相性リスク
補助金の名前は知っていても、制度の思想や要件の細部に通じていない支援者も存在します。「審査項目と無関係なキャッチコピーを並べるだけ」「返還リスクに触れない」「レスポンスが遅い」といった負の特徴を持つコンサルです。
こうした支援者に当たると、費用対効果は大きく毀損されます。人柄・誠実さ・対応の丁寧さは、最終的な成果を大きく左右します。「知人からの紹介」「知人のコンサル」で即決定するのではなく、事前の面談で補助金の理解度や実績などを吟味しましょう。
③「丸投げOK」をうたう業者のリスク
補助金は制度上、申請者自身が事業計画を作成した事実が必要です。「丸投げOK」を掲げる業者に任せると、後々の手続きや検査で齟齬が生じた際に「知らない計画だ」となり、採択取消・交付取消のリスクが高まります。
支援はあくまで助言・ブラッシュアップ・資料整備にとどまり、意思決定と内容の本質は企業側が握る体制で進めましょう。
次に、自力申請かコンサル活用かを判断するポイントをご紹介します。
判断のポイント
1.自社の前提条件を棚卸しする
次の観点をリスト化し、赤・黄・緑で自己診断します。
- 投資規模と資金調達の目途(自己資金、借入、リース)
- 既存の強みから転用できる技術・人材・取引先 ・新市場の規模・成長性・参入障壁の仮説
- 賃上げの実現可能性と人件費上昇の吸収計画 ・社内に計画書をまとめる実務者の有無と稼働確保
- 締切までの残日数、見積や図面の準備状況
2.時間対効果で定量比較する
簡易に概算しましょう。
- 自力の総工数=経営者80時間+実務担当120時間+設計・経理60時間=260時間
- 人件費換算(1時間あたり5,000円と仮定)=260×5,000=1,300,000円
- 機会損失(見込み営業の粗利逸失など)=300,000円
- 合計1,600,000円相当
- コンサル費(補助金2,000万円×10%)=2,000,000円
→差額400,000円。自社の人時単価が高いほど、外部活用が合理的になります。逆に、社内に経験者がいて短時間で仕上げられるなら自力に分があります。
3.ハイブリッド型を検討する
「企画・骨子は自社」「審査項目の整合と数値モデルは外部」「交付・実績の帳票は外部の雛形を流用」といった分担は現実的です。完全な丸投げは避けつつ、手戻りが大きいパートだけをプロのコンサルに任せることで、費用と品質のバランスを最適化できます。
4.支援者を見極めるチェックリスト
- 補助金のリスクとデメリット(返還・未達時の対応・資金繰り)を最初に説明するか
- 誠実で丁寧な対応か、質問へのレスが速いか ・中小企業庁系補助金の実績が豊富か、過去の類似制度に精通しているか
- 採択後、支給まで伴走できるか(交付・実績・検査・報告まで)
- 「丸投げOK」や過度な成功率の強調など、危ういPRをしていないか
- 見積書の内訳が明確で、作業範囲・責任範囲が文書化されているか
5.よくある失敗と回避策
- 新市場の定義を誤る→「ジャンル・分野」を先に定義し、性能・サイズ・価格帯・顧客層での区切りを避ける
- 目標の背伸び→賃上げ率や売上構成比は実現性のレンジで設計し、達成道筋をKPIで分解
- 広告費の使い方が曖昧→ターゲット・クリエイティブ・出稿面・CPA・回収までのシナリオを明記
- 工程と納期の齟齬→建築確認・設備納期・電気工事・試運転の所要を工程表に落とし込む
- 資金繰りの山→自己資金・融資のタイミングと補助金入金時期を月次CFで可視化
- 「採択で終わり」→交付・検査・報告までの帳票運用を設計し、担当とスケジュールを前倒しで割り当て
ケーススタディ
■ A社(機械部品製造、従業員35名)
自力申請で一次は不採択。審査コメントで「新市場定義の不備」「費用対効果の根拠薄い」「賃上げと利益計画の整合不足」を指摘。
第2回で外部コンサルを限定支援で起用し、ジャンル定義と市場規模の根拠を再設計、設備の歩留まり改善と労務生産性の定量効果を織り込み、採択。交付後は帳票ひな形を活用して実績報告もスムーズに完了。
■B社(食品製造、従業員12名)
初回からハイブリッド型。骨子と製品コンセプトは社長が作成、審査項目との整合と数値モデルを外部が支援。広告費のKPIと回収シナリオまで設計したことで、審査での評価が高く、採択後の販売も計画通りに進行。
■C社(内装施工、従業員18名)
「丸投げOK」の業者に依頼し書面は採択。しかし交付申請で内容の齟齬が露見し、設備仕様と導入目的の一貫性が取れず交付見送り。
最終的に計画を縮小し、社内主導で再申請して採択・交付に至ったが、半年の遅延と追加コストが発生した。教訓は「主体は常に自社」。
結論とおすすめの進め方
新事業進出補助金は、自力でも申請可能です。ただし、制度特有の考え方を外すと全体が崩れるため、「自力100%」に固執するのは得策とはいえません。
最も再現性が高いのは、①事業構想と意思決定は自社、②審査項目との整合・数値モデル・工程表は支援者の知見を活かす、③交付・実績の帳票は雛形を活用して内製、といったハイブリッド運用です。
まずは締切から逆算し、上記チェックリストで現状を見える化してから、外部活用の範囲を決めましょう。
弊社の支援スタンス
弊社では、補助金を「採択まで」で終わらせません。企画段階から交付・実績・事業化報告まで、返還リスクの予防と運用のしやすさにこだわって並走します。
最初の打ち合わせでは、企業にとってのメリットだけでなく、リスクやデメリットも正直にお伝えし、無理な申請はおすすめしません。制度のルールに反する「丸投げ」も行わず、申請者主導で決定された方向性に基づく資料作成等のサポートを行っていきます。
オンラインで全国対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか。新事業進出補助金は、企業の挑戦を後押しする強力な制度です。自力申請には「コストの最小化・事業理解の深化・事業展開のスピードアップ」という利点がある一方で、「専門性・時間・不備リスク」という壁があります。
コンサル活用は「勝ち筋の再現・時間創出・採択後の安心」が強みですが、「費用・品質ばらつき・丸投げリスク」に注意が必要です。
最終判断は、時間対効果とリスク許容度、そして締切までの残余リソースで決めましょう。ハイブリッド型の賢い活用も検討し、採択と実行の両立を実現してください。
広島県福山市に本社を置く弊社では、新事業進出補助金・ものづくり補助金をはじめとした色々な補助金の申請サポート(行政書士の連携による申請代行も対応)を展開し、オンラインでの全国対応も行っています。
豊富な知識・経験・実績を有する中小企業診断士が採択の実現を強力にサポートいたしますので、お気軽にご相談ください!
★採択に向けた加点の獲得には早めの準備が不可欠です!★
(広島県・岡山県だけでなく全国対応! ※北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)

中小企業診断士。1983年 広島県福山市生まれ。2009年から中小企業団体中央会に入職して中小企業支援の道に入り、ものづくり補助金の事務局も経験。2023年に補助金支援とや経営改善を行う”つなぐサポート合同会社”の代表に就任。補助金採択は100件・10億円・採択率80%を越える。事務局経験を活かした事業計画策定・手続きの一貫サポートが強み。趣味はランニング。

